株式会社大戸屋 代表取締役社長 三森 久実 | 経営課題を専門家に相談できるサイト イチゾウ | ページ 2

わが経営論

株式会社大戸屋 代表取締役社長 三森 久実

※下記は経営者通信10号(2011年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―競合他社と価格競争はしないのですか?

しないですね。もちろん低価格を喜ぶお客さまもいますから、それ自体を否定はしません。でも、私たちはそんな方向にはそもそも行けないんです。価格競争をしたら、大きな会社しか生き残れませんよ。当社とは食材の仕入れの量が圧倒的に違うので、仕入れ原価が違う。だから、私たちは価格ではなく品質で勝負するしかないんです。つまり、大手ができない店内調理で味を磨く。それが最善だと考えています。

―店内調理をしている大手外食チェーンはないのでしょうか。

私たちのように店内調理の比率が高い外食チェーンは非常に少ないと思います。ほとんどの外食チェーンは、セントラルキッチン(集中調理施設)によるフードシステムを採用しています。つまり、大規模な調理施設で食材を加工して、各店舗に運ぶ。そして、お店の調理は2~3割で済むようにしている。だからスピーディーに大量出店ができるわけです。でも、この仕組みは和食系の料理には向いていません。和食は素材の味が命です。セントラルキッチンで加工すればするほど、素材の味がとんでしまう。日本人が食べたら、味の違いは明確です。だから、私たちはセントラルキッチンを持たず、すべて店内で調理しているんです。毎日、各店舗の調理スタッフが野菜の芯を抜いて、スライスしている。ブロック肉も店でスライスしている。時間は少しかかりますが、やっぱりイチから店でやった方がうまいんですよ。

大戸屋はチェーン店にもかかわらず、個人経営の定食屋さんのような店内調理をしているわけですね。ところで御社は2005年のタイ進出を皮切りに、現在は海外で45店舗を展開しています。三森さんの考える「海外進出を成功させるポイント」を教えてください。

くり返しになりますが、一番は経営理念です。なぜなら、人間は常に判断しているからです。経営者だけでなく、現地のスタッフも常に判断している。仕入れ、接客、人材育成など、考えることはたくさんある。その際、経営理念を基準にして、やっていいこと、いけないことを考えてもらうんです。もし経営理念がなかったら、経営者自身も様々な判断を間違えると思います。とくに海外の場合、いろんな話を持ってくる人がいますからね。その時に理念をもっていないと、とんでもないことになりますよ。

―具体的にどんな危険があるのですか。

それはいろいろありますよ。たとえば、食材の調達について。和食で最も大事な食材は醤油です。でも日本から醤油を持っていくと、高い関税がかかる。現地調達の方が圧倒的に安いんです。ただ、現地の醤油は味が違う。では日本の醤油のレシピを持っていって、現地のメーカーに作ってもらえばいいのか?しかし、それでも味がまったく違うんです。その理由は、日本とタイでは温度と湿度が違うから。温度と湿度が変わると醤油の菌が変化して、味が変わるんですよ。だから、海外で日本の醤油の味を出すのは難しい。だったら関税が高くてもいいから、日本の醤油を持ち込もう。自然と私はそういう判断をしました。もし大戸屋に経営理念がなかったら、日本とは味が違う現地の醤油を使っていたかもしれません。すると目先の利益は得られても、少しずつ信用を失うことになるでしょう。食材の調達だけに限らず、そんな判断に迫られることが毎日ある。だから、経営理念が大事なんです。

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