株式会社大戸屋 代表取締役社長 三森 久実 | 経営課題を専門家に相談できるサイト イチゾウ | ページ 3

わが経営論

株式会社大戸屋 代表取締役社長 三森 久実

※下記は経営者通信10号(2011年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―海外進出において、他に大事な点はありますか。

良いパートナーをつくることですね。自社だけで進出すると、危険だと思います。現地の企業に騙されることもあるでしょう。当社の場合、日本の商社や金融機関が信頼できる現地企業を紹介してくれました。そういう点は大事だと思いますよ。

―日々の経営において、三森さんが気をつけていることはありますか。

財務ですね。財務は常に気をつけなければいけません。積極経営はいいんですが、財務のバランスは大事です。いくら売上が上がっていても、借金が多いと潰れる危険があります。だから、身の丈に合った経営をしなきゃいけません。

―経営者は攻めるだけではいけないと。

そりゃそうです。お金の怖さを知らなきゃダメです。だから、若い時に成功するのは良くない。経営者が若くして成功すると、その後ほとんど失敗します。20代で成功した経営者は30代で大失敗しているでしょ?若くして大儲けすると、どうしても安易になるんですよ。また若いと付き合う人も限られるので、同じ情報しか入ってこない。これはすごく危険ですよね。

―三森さんは若い時に失敗したのですか?

ええ。私の場合は30代で失敗しました。その後、現場に入り直したのが良かったのだと思います。そもそも私は二代目経営者です。私が21歳の時に先代が他界し、大戸屋の跡を継ぐことになりました。そして先代が築いた信用のおかげで、その後もお店は繁盛し続けました。そこで、勘違いしてしまったんです。商売なんて簡単だと。その後、私は居酒屋やハンバーガーのFCチェーン店にまで手を広げました。自分自身の手で新しいことをしたかったんです。でも、これらの店舗はすべて赤字でした。定食屋で稼いだお金を、他の業態のお店につぎ込んでいる状態でしたね。そして転機となったのが、大戸屋3号店の火災。1億円以上のお金をかけて作った吉祥寺店が一晩でなくなってしまったんです。その時に、自分の甘さにやっと気づきました。私に能力があるわけじゃない。先代や従業員のおかげで儲かっていたんだと。そして、もう一度、本業の大戸屋だけに専念することにしたのです。当時の私は34歳。その時に、生まれて初めてお金に困りましたね。

―30代でお金に苦労されたわけですね。

ええ。私たちの業種は設備投資が必要なので、どうしても最初に借金をします。当時は吉祥寺店の全面改装で借金が膨らみ、毎日の資金繰りさえ苦しかった。だから、夜眠れないんですよ。私は朝から晩まで厨房に立っていたので体は疲れている。少しビールを飲めば、自然と眠たくなります。でも夜中に目が覚めるんです。本当に眠れない。しかも夜中だし、悪いことばっかり思い浮かぶ。そんな日々を2年ぐらい過ごしました。その怖さはいまも鮮明に覚えています。もう二度とあんな風になりたくない。だから、常に財務には気をつけています。

―最後に、経営者へのアドバイスをお願いします。

アドバイスなんて偉そうなことは言えません。ただ、大事だと思うことはあります。それはひとつのことを一生懸命やること。やり抜くこと。あれもこれもなんて、いくつもできないと思います。だって「うまい」って難しいですよ。これでいいという終わりがない。だから、私たちは大根おろしや鰹節にも徹底的にこだわっています。食材を調べたり、調理器具を開発したり、他の美味しいお店に行って勉強したり。毎日がその繰り返しです。でも、必死に打ち込んでいれば、いつか苦労じゃなくなる。苦労が楽しみに変わるんです。ホント“食い物屋”はおもしろいですよ。

三森 久実プロフィール
1957年、山梨県生まれ。15歳で伯父のところへ養子に入る。帝京高校在学中は野球に没頭して甲子園を目指す。高校卒業後、洋食店フローラーフーズ株式会社に入社。しかし、1979年に養父が他界し、東京・池袋の「大戸屋食堂」を引き継ぐこととなる。1983年に株式会社大戸屋を設立し、代表取締役社長に就任。1992年、吉祥寺店の火災を機に「女性が気軽に入れる定食屋」という新しいコンセプトの定食屋を再オープン。その後、同社は女性からの絶大な支持を得て業績を拡大し、2001年にジャスダック市場に株式上場を果たす。2005年、タイに進出し、海外1号店をオープン。現在は国内231店舗、海外45店舗を運営している。

企業情報

企業名株式会社大戸屋
創業1958年
設立1983年
資本金7億2,401万円
売上高168億円(2010年3月期)
従業員数332名、アルバイト・パート3,072名(2010年3月31日現在[単体])
店舗数国内219店舗、海外38店舗(2010年3月31日現在)
事業内容家庭的な和定食を中心とした定食専門店「大戸屋ごはん処」のチェーン展開
URL http://www.ootoya.com/

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