エン・ジャパン株式会社 代表取締役会長 越智 通勝 | 経営課題を専門家に相談できるサイト イチゾウ

わが経営論

エン・ジャパン株式会社 代表取締役会長 越智 通勝

Vol.17

エン・ジャパン株式会社 代表取締役会長 越智 通勝

エン・ジャパンはネット求人広告業界の中でトップクラスの業績を誇り、目覚ましい成長を続けていた。2007年12月期の売上は約226億円、経常利益率は約33%。しかし、突如訪れた経営危機。越智通勝氏の経営者としての個人的苦悩、リーマン・ショックによる人材マーケットの急速な縮小。エン・ジャパンの売上は半減し、希望退職に踏み切ることになった。その後、同社は苦しい経営状況の中でも黒字を継続し、業績を回復基調に乗せている。会長の越智氏に、経営危機をいかにして乗り切ったか、逆境下で新たに掲げた志、今後の経営戦略などを聞いた。

※このインタビューは経営者通信14号(2011年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

― 御社の業績がまだ好調だった2008年6月に越智さんは突如会長に就任されています。その理由を教えてもらえますか?

実は今だから言えることなのですが、直接の理由は私自身が抱えたストレスでした。2007年の1年間で、公私ともに7つのストレスを抱えていたのです。そのひとつは、全社員の日報チェック。当社では全社員に日報を書かせており、当時はすべて私も目を通していました。社員数が急増し、1,000名を突破した時期です。朝の5時から8時まで、毎日1,000名分の日報を読んでいたんです。内容は初歩的な課題や悩みも多く、結果、相当のストレスが溜まったのだと思います。そんな日々が続き、突然、2008年1月に右側の顔面に“けいれん”が起きるようになりました。医師からは“片側顔面痙攣”と診断され、手術をしなければ治らないと言われました。そして対外的なイメージを考慮して社長の座を譲り、会長に就任。原因は何であれ、ストレスに負けるような情けない経営者ですよ。

― 越智さんが会長に就任された3ヵ月後、2008年秋にリーマン・ショックが起きます。その後の経営危機をどのように乗り切ったのですか?

たしかに、求人広告業界の売上は半分以下に減りました。当社の売上も200億円台から100億円台へと半減。それまでの増収増益から一転、初めての大幅減益に陥りました。それでも当社が赤字に陥らなかった理由は、2009年5月、業界の中で先駆けて希望退職による人員削減を行ったからです。あのときにやらなければ、翌年に倍の人数を削減しなければならなかったでしょう。とはいえ、経営者として決して自慢できることではありません。本来は人材ビジネス以外にも事業を拡大し、リスクを分散しておくべきだったと反省しています。

― 逆境下における経営のポイントを教えてください。

自然体で経営を行うことです。平素から“きれいごと”を言っていると、いざ危機に陥ったときに経営者としての判断を誤りかねない。経営者は偽善的では務まりません。当社が希望退職を決断できたのは、確固たる「人理念」があったからです。人理念とは「縁があって集まった仲間を『人間成長』という観点から、大善の心で目をかけ続ける。たとえ自社が危機に陥って、退職を余儀なくされても、どこでも通用する人財になれるように仲間として支援し、また、自らも努力する」という考え方。ここで言う『人間成長』とは「ビジネスを自らの成長ステージと捉え、心技一体のプロとして心物両面で豊かになること」です。つまり、当社は仕事そのものを成長の場と捉え、社員がどの業界でも通用できるように育成していくことを大切にしてきたわけです。もちろん、希望退職の決断には大きな葛藤がありましたが、「人理念」を平素から伝えてきたことで、決断の時期を誤らずにすんだと考えています。「就職先がなくて困っている」という話は聞いていないので、厳しく鍛えてきたことが功を奏したと思います。

― 逆境下では経営者の決断力が問われるのかもしれません。他に逆境を乗り切るためのヒントはありますか?

経営者の役割は、売れる商品・サービスを作り続けることです。成功体験なくして成長はないですから。不景気になったときに、今まで売れていた既存商品が売れなくなることが当然あります。そんなマーケット変化に対応した新しい商品を常に作り続けなければいけない。そうしておけば、当社も人を削減しなくてもよかったかもしれません。経営者として商品を作ってこなかったことは猛省すべき。その反省を踏まえて、今は新しい商品の芽を育てています。それが経営者の責任だと、今回の逆境下で改めて気がつきました。

― 経営者として様々な苦しみを抱えながらも、前進を続けているわけですね。長年にわたり人材ビジネスに携わっていますが、大切にしてきたことは何ですか?

おかげさまで新社長の鈴木がこの2年で期待以上の成長を遂げてくれました。目先の経営が安定軌道にあることで、私は人材ビジネスについて改めてじっくり考える時間をもてました。これまでの道のりを振り返ると、業界全体が転職をあおる中、私たちは「転職は慎重に。」という真逆のメッセージを発信してきました。当初は私個人の主観的な主張でしたが、考え方を地道に伝えていくうちに、求職者も企業も世の中も支持をしてくれるようになりました。ある程度、業界全体にも良い影響を与えられたのではないでしょうか。周りから認められるようになったことで、自分なりの仮説の正義が、結果として「社会正義」に至ったと思います。

― 人材ビジネスの今後については、どのように考えていますか?

この業界は、まだ矛盾を抱えています。適当に人が入社して適当に人が辞めれば、企業はまた求人広告を出す。すると業界は潤う。つまり、採用した人がすぐに辞めてもらったほうが業界としてはありがたい。私はこの構造がおかしいと思います。そこで、私たちは人材採用支援だけでなく、入社後のフォローまで行い、人財が活躍するかどうかまで見届けようと考えました。入社後の活躍支援については、すでに動き出しています。そして、もうひとつ考えたこと。それは、日本経済の将来を担う若手人財についてです。日本の将来を支えるべき若手人財は、「ゆとり教育」や「大学全入化」などで、“厳しさ・競争”の経験者が少なくなっています。ある有名大学の非常勤講師をした経験からも、このままでは日本はダメになると痛感しました。日本がグローバル競争を勝ち抜いていくためには、若手人財の弱体化に対して誰かが歯止めをかけなければいけない。憩いの場である家庭では叱られない。授業料をもらう大学も厳しくできない。そう考えると、若者を鍛えられるのは給与を払う立場のわれわれ企業しかないのではないか。そう確信し、「人間成長宣言」を掲げることにしたのです。

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