株式会社ビジネス・ブレークスルー 代表取締役社長 大前 研一 | 経営課題を専門家に相談できるサイト イチゾウ | ページ 2

わが経営論

株式会社ビジネス・ブレークスルー 代表取締役社長 大前 研一

※下記は経営者通信19号(2012年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

― 日本のサービス業、小売、飲食業といったBTOC企業が海外で成功するには、どのような条件や戦略が必要ですか。

世界には、年間所得が3,000ドルまでの中間所得層が14億人ほどいます。今後はどんな企業も、新興国を中心とした中間所得層をいかに取り込むかが重要。ただ、品質を落として価格を下げるアプローチは間違い。「安かろう悪かろう」ではなく、いいものを安く売る。ユニクロのように、品質はそのままでも余分なコストをカットして売価を下げる戦略です。飲食業の場合、日本でうまくいった店舗でもそのままのノウハウで海外展開すると失敗します。まず自分自身か現地の店舗を任せる予定の人が現地に居住し、流行りの類似店を1、2年ほど研究する。するとその理由がわかってきます。しかし、海外進出に失敗している飲食店のほとんどが不動産探しから始めている。お客さまの研究が先です。やはり相手のマーケットを学ぶことに時間をかけないと、うまくいきません。コンサルタントにも頼らず、最後は自分でやりきることです。サービス業では過剰な事業拡大は禁物。80年代、宮崎のシーガイアは銀行から多額の融資を受けて設備投資をしました。結果としてハワイを彷彿させる豪華な施設になりましたが、本物のハワイに行くよりも高額な偽物ができてしまった。まさに本末転倒です。オランダを真似たハウステンボスも同じ理由で失敗しました。航空運賃が下がり、“本場”に行く方が安くなってしまったのです。

― 海外をマーケットとしてとらえると、日本にとって有力な地域や国はどこでしょうか?

筆頭はインドネシア。人口が2億4,000万人と多く、最近は購買力もついてきました。それと圧倒的に日本びいきで、国民の7割が「日本が一番好き」と言います。日本好きな国といえば一番は台湾。タイやインド、トルコも親日的です。意外なところではロシアが挙がります。ロシアにいい印象を持たない日本人も少なくありませんが、実はロシア人の7割が日本好き。理由はさまざまで、日本の商品が好きというのもそのひとつです。ミャンマーも悪くないのですが、すでに中国が深く入り込んでいます。

― では、海外を生産拠点としてとらえると、日本に適した地域や国はどこでしょうか?

生産品目によって異なります。自動車部品は中国だと長春、天津、上海、広州などで、東南アジアではタイが圧倒的にいい。縫製はこれまで中国でしたが、次第にバングラデシュへ移るでしょう。縫製産業は中国の月給が1万円の頃に進出し、今は5~6万円ほどですから出て行かざるを得なくなっています。

― これまで多くの経営者の方と会われてきたと思いますが、成功する経営者にある共通点や必要条件があれば教えてください。

明確な意思決定ができる人ですね。その時々で中途半端なことを言わず、部下への指示もはっきりしている。漠然とした言葉ではなく、いかに細部まで指示を出せるか。出てきたものに対していかに意志決定ができるか。一方で、何か問題が起こった時にその解決策を社員にゆだねる経営者がいます。家族にたとえれば、息子が問題を起こした時に、ひどい父親だと母親に責任をなすりつけて何とかしろ、と言う。これではいけません。つまり、経営者は従業員全員を自分の子どものように思い、行動しなくてはいけません。一方、お客さまは買ってくれた商品を通じて自分の給料を払ってくれている人、という気持ちが大切です。

また、自社商品が売れていないとしましょう。そこで対策を即言できる経営者は成功しません。どんな作業をやって、どんな実験をしたのか。そんなプロセスを経た中で得られる結果から、ようやく本当の対策が判明するのですから。①「トラブルには自分自身で向き合う」②「お客さまのことを理解する」③「事業目的に自身の個人的目標を持ちこまない」―これこそ、成功する経営者の3大条件です。そもそも事業の目的を勘違いしている経営者が多い。たとえば売上目標は本当に事業の目的ですか?店舗数の多さを誇らしげに話す飲食店の経営者もいます。でも、それは自分の目標であってお客さまのことを考えた事業ではない。「会社帰りのお客さまにリラックスしてもらえる店舗をつくろう」。これが真の事業といえます。その店舗がいくつあるかは関係ありません。

― 大前さんは現在もさまざまな活動に取り組まれています。精力的な活動を支える原動力は何でしょうか。

人生の最後に、どう言って死にたいかを考えて生きています。私はやりたいことを全部やりましたし、最後は「俺の人生、よかったな」と言って死にたい。だから今は何を頼まれても引き受けません。逆に自分のやるべきこと、やりたいことは頼まれなくてもやる。去年は福島第一原発の原子炉を専門的に分析してレポートをまとめました。このレポートで新しい基準ができていますから満足です。それに、一人でやればしがらみのない立場で自己満足できるものがつくれる。下手に委員会のメンバーになったり、誰かと徒党を組むと自分と違う考え方に妥協しないといけません。ですから納得する人生を生きようとする信念が、人生の糧になっていると思います。

大前 研一プロフィール
1943年、福岡県生まれ。早稲田大学を卒業後、東京工業大学大学院で修士号を取得。その後、マサチューセッツ工科大学大学院で博士号を取得。株式会社日立製作所を経て、1972年にマッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任する。1994年にマッキンゼー・アンド・カンパニー・インクを退職。同年、英国の経済誌「エコノミスト」にて、現代社会の5人のグールー(思想的指導者)に選ばれる。2002年に中国遼寧省および、天津市の経済顧問に就任。2005年に本邦初の遠隔教育法によるMBAプログラム(現在のビジネス・ブレークスルー大学大学院)を開講し、学長に就任。現在は株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長、株式会社大前・アンド・アソシエーツなどの創業者兼取締役。日本国内はもとより海外での評価も高く、経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

企業情報

設立1998年4月
資本金14億7,752万円
売上高24億6,403万円(2012年3月期)
従業員数78名(2012年3月31日現在)
事業内容●マネジメント教育事業 ●マネジメントコンテンツのプロバイダー事業 ●通信衛星を利用したデジタル放送の委託放送事業 ●遠隔教育システムコンサルタント及びサービスプロバイダー ●ビジネス・ブレークスルー大学運営 ●ビジネス・ブレークスルー大学大学院運営 ●ビジネス及びマネジメント専門コンテンツの企画・制作 ●ビジネス及びマネジメントE-learning事業 ●インターネット放送、衛星放送によるコンテンツプロバイダー
URL http://www.bbt757.com/

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