ヤマトホールディングス株式会社 代表取締役会長 瀬戸 薫 | 経営課題を専門家に相談できるサイト イチゾウ

わが経営論

ヤマトホールディングス株式会社 代表取締役会長 瀬戸 薫

Vol.29

ヤマトホールディングス株式会社 代表取締役会長 瀬戸 薫

市場に競合がひしめきあうなか、40年近くもトップシェアを占め続けるのは至難の技。それを実現しているのが、宅配便市場のパイオニア・ヤマトグループだ。「宅急便」は人々の生活に欠かせないインフラとなり、2012年3月期の同グループ連結売上高は1兆2,600億円を突破。次々と新しい商品やサービスを投入、イノベーションを起こし続け、ライバルたちの追撃をはねつけている。なぜ“クロネコ”は顧客の支持を集め続けることができるのか。18万人の巨大グループを束ねるヤマトホールディングス会長の瀬戸氏に聞いた。

※下記は経営者通信24号(2013年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

― 1976年の「宅急便」開始以来、宅配便市場でトップシェアを維持し続けています。なぜ、これほど強いのですか。

ハッキリした理由があります。荷物を受け取る利用者、つまりエンドユーザーの利便性向上を図るイノベーションを継続してきたことです。運輸業では収益源である配送料金を支払ってくれる荷主を「顧客」といいますが、当社は顧客以上に、エンドユーザーの使い勝手向上を目指してきました。ここが当社の強みです。

あらゆる企業は収益拡大のため、差別化にしのぎを削り、顧客を取り込もうとします。しかし、運輸業の場合、「荷物を預かり、お届けする」というビジネスモデル自体は変えようがありません。こうした差別化困難な環境下では、どうしても価格競争が起きやすくなり、顧客囲い込みのための運賃値下げ合戦が発生します。そして、その裏側でエンドユーザーの利便性向上は後回しにされてきました。

たとえば、宅急便が登場する以前は、「集荷してからお届けするのは1週間後が当たり前」など、早く荷物を届けたいという顧客ニーズはもちろん、早く受け取りたいというエンドユーザーのニーズも汲み取られていませんでした。

― 値引き競争の一方で、物流システムの改革は後回しにされていたのですね。

そうした構造を変革したのが宅急便。全国一律で翌日配送を実現するなど、宅急便は顧客とエンドユーザーの利便性を飛躍的に高めたと自負しています。ただし、宅急便の実現には、さまざまな困難がともないました。物流システム網を築くには巨額の投資が必要だったのはもちろん、官僚の規制と戦うことも不可避だったからです。会社の存亡を賭けて、あらゆる経営資源を宅急便に投下しました。こうした、利便性を最優先する企業姿勢を保ち続けてきたことが、トップシェアを維持してきた最大の要因だと分析しています。

― 収益源ではないエンドユーザーのための投資が、なぜNo.1の源泉になりえたのですか。

利便性の高い宅配サービスを使えば、エンドユーザーは顧客である荷主に対して好印象を持ちますよね。「あの会社から買うと便利だ」「次もあの会社に注文しよう」となる。つまり、エンドユーザー重視のサービスは、顧客のビジネス拡大にもつながるんです。その結果、注文増で荷物が多くなり、当社の取扱個数も伸びる。こういう論法です。

― 時間がかかる方法ですね。

確かに、一見すると、回りくどい方法かもしれません(笑)。しかし、宅急便の創始者である小倉さん(小倉昌男元会長)は、つねに「サービスが先、利益は後」といっていました。「ヤマトにまかせれば安心だ」という信頼感を築き、顧客に取引を継続してもらうためには、絶え間なくイノベーションを行い、サービスの質を磨き続けるほかないのですから。

こうした考え方は、当社の「DNA」とも呼べるものです。会社の収益より先に顧客の利益やエンドユーザーの使い勝手を考える風土が、ヤマトグループのすみずみに根付いています。

― ヤマトグループの従業員数は約18万人。それだけの人員を束ね、DNAを浸透させるのは大変だと思います。どんな取り組みをしているのですか。

そうです。実際、SDには多くの権限を移譲しており、自主的に業務判断できる仕組みになっています。顧客やエンドユーザーから聞いた要望に、即時対応するためです。これを当社では、「全員経営」「サービス第一」という理念に集約しています。現場に権限がなく、上が押さえつけている組織では、仕事をやらされている感が強く、士気が低下。サービスレベルも業績も上がりません。当社の生命線は「全員経営」で働いている、現場のSDたち。SDがお客さまの声を吸い上げ、新商品開発のきっかけをつくることもしばしばです。

※小倉昌男元会長:ヤマト運輸株式会社(現:ヤマトホールディング株式会社)の社長として、1976 年、民間初の個人向け小口貨物配送サービス「宅急便」を創始。同社が売上高1兆円を超える大手運輸会社に発展する基礎を築く。宅配便の規制緩和をめぐっては、運輸業の許認可権を持つ旧運輸省(現:国土交通省)や旧郵政省(現:総務省)と激しく対立。圧倒的な世論の支持を集め、規制緩和を実現する土台をつくった。1987年、会長に就任。2005年に逝去。

※このサイトは、取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。
ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(株式会社幕末)は何ら保証しないことをご了承ください。自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。

株式会社幕末

経営課題を専門家に相談できるサイト 専門家 131人 掲載中

Copyright © 2013 KEITSU. All Rights Reserved.